テーマ討論 1

憲法がいきる教育と社会の実現を

コーディネーター

  松本  徹 (室蘭工業高校)

パネラー

神保 大地 (自由法曹団)
山本 政俊 (有朋高校)
北海道大学学生  

 本テーマ討論は、2013年夏の参議院選挙で改憲勢力が議席の多数を占める国会情勢を憂慮して開催されました。改憲に執念を燃やす安倍政権とその補完勢力ですが、憲法改正により、戦争への道が開かれ、国民の主権が侵される危険性を危惧する国民世論を考慮して、改憲を正面から公約に掲げることはできませんでした。今こそ、日本国憲法の意義を学び直し、憲法が活きる教育と社会の実現を求める運動と世論を高める取り組みが重要となっています。
 パネラーは法律の専門家として、若手弁護士の神保大地さん、教育実践者として、憲法出前授業で全道を駆け巡る山本政俊さんにお願いしました。さらに、若者から見た憲法観を語ってもらおうと、北大で山本さんの講義を受講している教員志望の大学生にもパネラーを引き受けていただきました。コーディネーターは自らも豊富な授業実践を行っている松本徹さんが務めました。
 神保弁護士や高校の社会科教員の山本政俊さんからは、憲法問題に関心があって集会に参加する人たちであっても、「憲法とは何か」「憲法は誰のためにあるのか」といった根本=「立憲主義」が「知られていない」「教えられてこなかった」実態が明らかにされました。憲法が国民を縛るものではなく、権力者の暴走を抑える[命令書]であるということを、大きく広げることが重要であることを実感しました。
 北大生のパネラーは、自分の受けてきた教育を振り返って、中学校・高校と、「受験のために知識として暗記する内容として憲法をとらえるようになっていました」と指摘しました。これまでの学校での憲法の授業について、反省させられ、考えさせられる指摘でした。「知識」として教え込むのではなく、国民の人権と平和を守る憲法の意義を学ぶ教育実践が求められています。
 社会科教員だけが憲法を取り上げるのではなく、すべての教科、あらゆる教育活動の中で憲法をいかした教育実践を行うことが求められています。道教委が強行した勤務実態調査など、こんな政策でいいのかと叫びたくなるような学校・社会の状況が広がる中、34名の参加者一人一人が今自分にできることは何かを真剣に考える集会となりました。


テーマ討論 2

私たちは原発とどう向き合うか

コーディネーター

  川原 茂雄 (札幌琴似工業高校)

パネラー

池田 考司 (奈井江商業高校)
宍戸  慈 (フリーパーソナリティ)
渡邉 恭一 (ギガデザイン代表)

 初めにパネラーの宍戸さん、渡邉さんから、「3・11」に福島で起きた状況、どんな思いで札幌に避難したのかについて、報告がありました。
 郡山でラジオのパーソナリティーをしていた宍戸さんは、「原発が爆発した当時、原発の知識をほとんどなく、私はここで死ぬんだなと感じながら、10日間、24時間のラジオ放送を生で伝え続けた」こと、「自分のことは自分で守ることに気づき、12月に単身で札幌への避難を決意した」経緯を語りました。ブログに「避難する」と書いたら、激しいバッシングにあい、「それでも避難することでしか、自分の生き方を示せなかった。いつか子どもを産みたいという思いが決断を促した」と当時の心境を述べました。
 福島市に住んでいた渡邉さんは、「4月8日から学校再開を判断したことが誤り。マスクをとり側溝の上を歩く子どもたちを毎日怒ってばかりいた。学校から危険な状況について何の説明もなく、校庭の使用についても保護者にアンケートをとり検討していた。文科省の説明を聞いたが、子どもたちを守る姿勢がないと感じ、6月に札幌に避難した」と報告しました。「福島にとどまった友人が、子ども間で分断が起き苦しんでいたが、見守るしかなかった」事実も語られました。
 高校社会科教員の池田さんからは、「避難できた人と、できなかった人がいることが分断と対立を生んでいる。同調圧力の問題に目を向け、不信と対立からどうやって共感の関係をつくっていくか」との課題が提起され、参加者を含めた討論を通じて、「子どもたちに正確な事実を伝え、子どもたちが主体的に判断し行動していく力をつけていくこと」、「一人ひとりの市民が、科学的知識を国民的教養として持てるようにすること」の大切さが確認されました。


テーマ討論 3

学ぶ 働く つながる 〜「生きづらさ」を越えて〜

コーディネーター

  上原 慎一 (北海道大学)

パネラー

馬場 雅史 (札幌南陵高校)
札幌南陵高校吹奏楽部 生徒・OB・OG

 とかく「個別的」「個人主義」的になりがちな進路の指導から、「学校でしか出来ない"つながり"や"連帯"の学びを大切にした日々の実践」の発見へー。今年のテーマ討論Bは、例年とは趣を変え、不安を抱えた高校生・卒業生を真ん中にフロアとの交流が行われました。
  テーマ討論の始まりは若者の希望と不安、決意をそのまま音色にしたフルートの演奏からで、「ゲスト」参加の南陵高校吹奏楽部生徒とOGがそれぞれに、「幼稚園教諭をめざす」「演奏家としての未来はあるだろうか?」と「いま」の自分を語り、フロアの参加者との「かけあい」で討論がすすみました。
 「プロの演奏者をめざすこと」を問われ、フロアの高校教員からは「挑戦したい何かがあることはすばらしい」と発言がー。「学校の指導は、ともすると"はかれるもの"に傾きがち」「資格、成績、進学実績、就職率―"子どもたちのため"に、"これなら"という"確実さ"を求め、生徒たちを"はかれる"道にはめこめば安心。そうなっていいないか?」「本当に大事なものは目に見えないことが多い。いのちとか、友人とのつながりとか、目に見えないそれらが、実は生徒にとって何よりも大切。今日もそれを感じさせられた」と発言がありました。コーディネーターの上原慎一さんからの「喧伝されるキャリア教育は、格差社会への適合を若者たちに強い、際限のない競争と「がんばり地獄」に彼らを追いやっていはしないか?」の問いかけ、札幌ローカルユニオン川村さんからの活動報告もあり、若者の自立と「連帯(つながり)」、学校と地域社会を考えるテーマ討論になりました。


テーマ討論 4

「競争と管理」を乗り越える実践・学校づくり


コーディネーター

  椙木 康展さん (道教組)

パネラー

山本 仁史 (北見市西小学校)
青木 治真 (せたな町立大成中学校)
阿部 俊樹 (札幌市立手稲鉄北小学校)

 パネラーの山本さんからは、大変な学級なのですが、算数を重点に自作プリントの活用、遊び心を大事にするため、ゲームを取り入れた授業改善が報告されました。そして、多くの教師が自分の学級にかかわってくれるような指導体制になり、自分も助かっていると話されていました。
 青木さんからは、毎週とりくんだ職場での授業交流を通して「いい授業をしたい」という願いが連帯感を育んだ学校づくりのとりくみが紹介されました。このとりくみで職員室が明るくなり、保護者にも子どもの姿(成長)を見てもらいおうという話もできるようになりました。
 阿部さんからは、子どもたちの作品を見て良いところを話題にしたとりくみ、ベテランが研修で指導法の講師を務めたとりくみなど、学級・学年・学校全体での協力共同が見える報告がされました。
  「子どもたちを前にして願うこと、職場で言い続けなければならないことのヒントがたくさんもらえた」、「教師のあきらめ感の広がりや主体性が失われていく現場だが、『良い授業をしたい』『子どもの成長を喜ぶ』とりくみを聞いて元気が出た」、「もっと深めたい」の感想が寄せられました。

テーマ討論 5

北大"アイヌ人骨問題"を考える


コーディネーター

  清水 裕二 (北大開示文書研究会)

報告者

阿部 一司 (北海道アイヌ協会副理事長)

 テーマ討論の前半は、阿部さん、清水さんの報告に基づき、参加者全員で、北大「アイヌ人骨問題」の歴史的背景、遺骨返還交渉の経緯を確認し合いました。
 明治時代から戦後にかけて、北海道・樺太・千島において、北大をはじめとする旧帝国大学を中心とする人類学・解剖学の研究者によってアイヌ人骨の発掘と収集が行われました。「学術調査」の名のもとで、組織的に公然と繰り返されたアイヌ墓地の「盗掘」で集められた人骨は1000体に及びます。
 1980年代にウタリ協会(当時)が遺骨の返還・慰霊を求め、北大構内に「アイヌ人骨納骨堂」が建立されましたが、発掘をめぐる経緯や真相は今日に至るまで明らかにされておらず、現在、遺骨返還を北大に求める「北大人骨問題に関する裁判」も係争中です。
 後半の討論では、不誠実な対応を続ける北大の姿勢を正し、真相究明、遺骨の返還、遺族への謝罪を求めていくことなど、今後の課題について認識を深めました。この問題を「今日進行する人権問題」ととらえ、広く市民に伝え、理解と支援を広げていくことの重要性が確認されました。