
高校生演劇
「はるにれと少年」
(あらすじ)
会場にそよかぜを運ぶピアノの調べが始まりでした。高さ17・6m、幹の周り3・6m、直径1・5m、枝の幅は23m、2本の木が一体化している樹齢146歳のはるにれの木が十勝川流域の豊頃にあります。そのはるにれの精霊二人と7人のコロスは十勝の、そして北海道の歴史を静かに見守ってきました。
太郎は「ちびっこ」と精霊たちに呼ばれ、かくれんぼやおにごっこ、ダンスをしながら大きくなりました。精霊は春はピンク、夏は緑、秋は紅葉色、冬は水色と装いを変え、季節毎の大地や空、動物たちとの語らい、太郎との交情を歌や短い言葉で伝えてくれました。
はるにれは、長い年月の間、木陰で人々や家畜を休ませ、子どもたちに大地のあたたかさや自然の雄大さを感じさせました。また、戦争に向かう人々を静かにみつめ亡くなった兵士を悼みました。はるにれの木の下で「バンザーイ」と若者を戦地に送り出す人々と遺骨を抱えた遺族がすれ違う場面に観客が息をのみました。十勝川の氾濫の度にはるにれの枝が災害を大きくすると伐採されそうになった時に、村人が残すよう懇願したこともありました。その中に太郎の祖父母もいたと知ります。15歳になった太郎は「自分もはるにれに何かしたい」と「海を見たことがない」という、はるにれのために海を見てきてそれを伝えると旅立ちます。
冬の海には魔物がいると心配するはるにれたち。ある日、太郎が氷を背負い無事帰ってきて喜ぶはるにれたち。太郎は海は灰色で波だけが白く、おっかねーほどどんどん押し寄せてきたと目を輝かせて説明します。しゃぶってみたけどしょっぱくない氷は昇華して跡形もなくなりましたが太郎の祈りで形を現します。氷で遊ぶ太郎とはるにれたち。
太郎はその後、離農のため遠方に引っ越しすると別れを告げます。そして、「きっと戻ってここの土になる。その時までじゃあな」と去っていきます。はるにれの精霊はにこにこと顔を合わせ「それまでまつべか」「んだ、まつべ」と話しました。やさしい雪が舞う日でした。
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